百歳祝いの手形
肘折温泉の湯治客はお年寄り中心ですが、若い頃からずっと何十年と通っている常連さんが大多数。酒田市にお住まいのあるお客さまは、百歳の祝いに家族総出で『三浦屋旅館』にやってきました。「せっかくのお祝なのだから、普段行けない場所に連れて行ってもらったらよかったのに…」と声をかけたご主人の三原秀衛さんに、お客さまは「身体が弱かった若い頃に、湯治に通った肘折が忘れられなくてね。子どもたちにお世話になった三浦屋にどうしても行きたいとお願いしたんだよ」と語ってくれたそうです。そのお客さまは〈百歳の年祝いの手形〉を三浦屋さんに残してくれました。もう10年も前の思い出。でもご主人は、手形を見るたびに、これからもこのようなお客さまのために、肘折で旅館を続けていかなければと、気をひき締めているそうです。