片栗（カタクリ）の愛らしい花は、肘折ではまだ雪の残る季節に咲く、春植物の代表です。『三浦屋旅館』には、この花を目当てに、5月に必ず宿泊されるお客さまがいるそうです。千葉にお住まいのそのお客さまは、もう10年以上のお付き合いの常連さん。しかし、三浦屋旅館のご主人・三原秀衛さんは、はじめ、「若い女性がこんな山奥に度々来るには、何か特別な理由があるのだろう」と思っていたそうです。あるとき何気なくその疑問を伝えてみると、「春の片栗の花を見に来るため」と知り、びっくり。「（肘折では）どこにでも咲いている花を目的に、わざわざ千葉から来ているなんて思ってもみなかったからね」と三原さん。けれども、自分では見えなかった足元にある〈肘折の良さ〉を気付かせてくれたそのお客さまに、今はとても感謝しているそうです。