近岡善次郎 作『湯治の風景』
湯に浸かっている2人の老人が顔の前に両手を合わせ、一心に何かを唱えながら目をとじている姿を描いた作品『湯治の風景』は、肘折温泉をたびたび訪れた洋画家・近岡善次郎(1914~2007)の筆によるものです。この絵と『つたや肘折ホテル』の縁をつないだのは、大石田町の町長さんと大蔵村の村長さん。2人は老人のまわりに念仏が書かれていることに気付き、「これは肘折本来の湯治文化を伝える、たいへん貴重な資料である」と、旧知の仲だった当時の肘折ホテルのご主人・柿崎繁雄さんにこの絵を贈ったそうです。近岡は晩年、故郷・山形の慣習や伝統文化を題材に多くの作品を残しましたが、山奥の温泉地に残る素朴な湯治文化もまた、描き残しておきたい魅力的な光景だったのでしょう。