結婚記念のこけし

結婚記念のこけし

かつて肘折温泉には3人のこけし工人が暮らしていました。現在、工人は鈴木征一さんただ一人になってしまいましたが、肘折の人々はこれまでつくられてきたこけしを大切に保管し、次の世代に受け継いでいます。『四季の宿 松屋』の廊下にも、大きなこけしが飾られていますが、これは若旦那の高山茂さんが鈴木さんから結婚祝いにいただいたもの。子どもの頃、高山さんの遊び場は決まって温泉街の裏路地だったのですが、そこにはもう亡くなったこけし工人・奥山庫治さんの作業場があり、茂少年はその器用な手仕事をよく覗き見ていたそうです。鈴木さんは奥山さんの弟子で、また、当時の松屋でお母さまが働いていたご縁もあり、お祝いにこけしを贈りました。肘折のこけしは湯治客の土産物としてだけではなく、結婚記念のこけしここに暮らす人々の間でも心を込めて贈り合う、特別な民芸品なのです。