灯ろう流し
肘折温泉に寄り添い流れる銅山川で、毎年8月17日の夜におこなわれる『灯ろう流し』。読経が響き渡るなか、ロウソクをのせた灯ろうが肘折の人々の手によって川面に次々と放たれると、小さな灯火は揺れながら川下の闇へと吸い込まれていきます。手を合わせて、静かにその先を見つめる人々―。先祖の安息を願うこの『灯ろう流し』は、今から30年前、墓地移転をきっかけにはじめられました。対岸の土手にあった墓地の一部に道路が通ることになり、ご先祖たちの眠るお墓が現在の場所に移されたのですが、肘折の人々は「ご先祖を掘り起こしてしまったのは申し訳ない。何か供養をしないと」と、手づくりした灯ろうを銅山川に流しはじめました。伝統を頑に守りながらも、否応なく変化していく村の風景。けれども古きを重んじる人々の心が変わることはありません。