村に嫁いだバスガイドさん

村に嫁いだバスガイドさん

肘折温泉にバスがやってくると、訪れる湯治客が一気に増えました。全ての旅館が〈満室御礼〉のため、旅館同士でお客さまを譲り合って、なんとかやりくりしたそうです。バスの路線も拡充し、最盛期には山形市や寒河江市からの直通バスが毎日通ったとか。しかも、どのバスも人と湯治の荷物でぎゅうぎゅう詰め。肘折温泉の繁盛振りがうかがえます。そんな賑やかなバスには若い女性の『バスガイド』が乗車し、民謡を歌ったり、肘折までの観光案内をしたりと、お客さんを楽しませたそうです。バスガイドのなかには肘折温泉に嫁いだ人も多かったそうですから、バスは恋も運んできたのですね。現在、肘折までの交通手段は自家用車が主流になり、バスをめぐる華やかな話題は過去のものとなりましたが、肘折の人々の村に嫁いだバスガイドさん〈バスの思い出話〉は尽きることがありません。