峠を越えてきた青年団

峠を越えてきた青年団

その昔、山奥にある肘折温泉は交通の便が悪く、冬は外界から閉ざされた集落でした。それでも人々は、霊湯・肘折の温泉を求めて険しい山道を歩いてきました。昭和20年頃の肘折には、県内の各地方からたくさんの〈青年団〉が慰安旅行に訪れたそうです。寒河江市のある青年団は、現在も難路として有名な『十部一峠(至寒河江458号)』を、なんと丸1日かけて徒歩で越えてきたとか。前日の夜に寒河江を出発して残雪の峠道を歩き、到着したのはお昼ちかくになったそうです。若い青年団が現れると静かな温泉街が一気に賑やかになり、夜は番頭さんや仲居さんも一緒にお酒を飲み、楽しく過ごしたそうです。お年寄りの常連さんにはかつて青年団として肘折に訪れた人も多く、峠を越えてきた青年団今は往時を懐かしみながら、なじみの宿のご主人と静かにお酒を酌み交わしているそうです。