伝統の『朝市』

伝統の『朝市』

夜明けとともにはじまる肘折の朝市は、温泉街がもっとも賑わう時間。朝靄のなか「カラン、コロン」と下駄の音が響きます。どんと腰を下ろした村のお母さんたちと「どこから来たんだ?」「ほれ、食べてけらっしゃい!」なんて、かけあいが楽しい肘折の朝市は、江戸時代に近隣の村人が、湯治客相手の行商をおこなったのがはじまり。かつて湯治客は米を持参して素泊まりし、料理は自炊が基本でしたから、朝市はいわば逗留の際の〈おかずの仕入れ〉だったのですね。春は山菜、秋はキノコなどの山の幸が主役ですが、村のお母さんたちが生産した最上地方の伝統野菜や、しそ巻きや南蛮味噌などの加工品も並びます。その他にも、川魚やモクズガニ、野草、漢方薬の一種として使われるサルノコシカケや黄檗、伝統の『朝市』マムシの丸焼きなどの珍品も売られ、この地域独自の食文化を垣間みることができます。